旅行・観光業界における生成AI活用の実践
「AIは人を代替しない。問題は、AIをどれだけうまく使えるか。使いこなせないなら、『うまく使える人』に取って代わられる」
先日、韓国観光公社主催の**「2023観光産業デジタル革新オープンセミナー」**で、ChatGPTとは何か、旅行・観光業界にどう応用されるのか——多様な議論が交わされた。ほぼすべてのセッションで、冒頭の言葉が繰り返された。
ChatGPTのような生成AIが業務にもたらす変化は、すでに耳にされていることだろう。単なる生産性向上にとどまらず、旅行や観光産業にも影響を及ぼす——実際、変化はすでに始まっている。
急速に高まるChatGPTの影響力のなかで、旅行・観光業界は生成AIをどう活用できるのか。そして、どんな未来が待っているのだろうか。
1. ChatGPTの概念と期待される効果
ChatGPTは、大規模言語学習によって構築されたファウンデーションモデル「GPT」をベースとした生成AIのひとつだ。LLM(Large Language Model)として、文脈に沿った文章を生成するよう設計されている。「ちりも積もれば」と入力すれば「山となる」と返すように。
ファウンデーションモデルで動く超大規模AIは、従来と何が違うのか?
以前のAIは医療や法律など、分野ごとにモデルを構築し学習させる方式だった。いま、モデルのサイズを拡大し膨大なデータで学習させることで、文字通り「土台」としての役割を果たす。広範なデータで学習されたファウンデーションモデルに、観光のような特定分野の専門データを少し追加するだけで、優れた「観光コーディネーターAI」が完成する。
専門家たちは、超大規模AIがもたらす期待効果を大きく3つに挙げている。
1) 情報検索
これまで人が一つひとつ検索し情報を得ていたが、今後はAIが見つけて提示する。
✔️収束型検索
大きな範囲から徐々に希望する方向へ情報を絞り込んでいく方式だ。

たとえば「自己啓発書を20冊推薦して→世界的ベストセラーだけに絞って→その中で時間管理について語っている本は?」と収束させ、求める情報を見つけられる。
Google等の検索エンジンなら「自己啓発書20冊」「世界的ベストセラー」「時間管理の本」をいちいち検索し、自分で統合して探し出す必要があるが。
✔️カスタマイズ検索
AIが返す内容も、すべての人に最適とは限らない。個人の好みが反映される(例:グルメ店)分野なら、なおさらだ。
AIの回答に「いいね」「いまいち」と評価し、対話を通じて学習させれば、徐々に自分にカスタマイズされた情報が得られる。
2) 業務生産性の向上
情報検索の次に多くの人が実感する部分だろう。反復的で時間のかかるメールや文書作成の時間を大幅に削減する。
それだけでなく、広告コピーのような創造性を要する作業でもアイデアを得られる。韓国語データで学習され「韓国のChatGPT」と呼ばれるNAVER超大規模AI「HyperCLOVA」を活用した現代百貨店のAIコピーライター「ルイス」が代表例だ。2週間要していたコピーライティング業務が3時間に短縮されたという。
3) コンテンツ生成
生成AIはChatGPTのようなテキスト以外にも、画像、映像、音声など多様な形態で提供される。より多様なコンテンツを、より早く作れるようになった。
生成したいイメージの説明をテキストで伝えるだけで、「Midjourney」や「DALL·E」は短時間でそれらしい画像を生成する。
そのほか、Microsoftが発表した365 Copilotを見ると、文書内容を基にしたPPTが一瞬で作られる。
2. 旅行・観光業界におけるChatGPT活用事例
ChatGPTはログインするだけで人と会話するように簡単に利用できるためか、5日でユーザー100万人を獲得し、2カ月で月間アクティブユーザー(MAU)1億人を達成した。100万ユーザー獲得までNetflixは3.5年、Facebookは10カ月、Instagramは2.5カ月かかったことを考えると、驚異的な成長スピードだ。

ChatGPTの登場により、生成AIが時代を急速に席巻することは誰もが同意するだろう。ただし、フォーチュン誌が世界500大企業のCEOを対象に行った調査によると、約55%が「(AIの)適切な用途がわからない」と答えた。
つまり、AIが重要な技術だとは知っているが、自社でどう導入し活用すべきかに困っている——これは旅行・観光産業も同様だろう。
方向性が見えないなら、いち早くAIを導入した企業の事例から見ていくべきだ。旅行・観光業界では、ChatGPTのような生成AIをどう活用しているのか?
MyRealTripは今年2月、ChatGPTと連動した「AIプランナー」サービスをリリース。チャットに_「大阪3泊4日の旅行日程を教えて」_と入力すれば、会話形式で旅程を提案してくれる。人気商品や穴場スポットなどの追加情報も得られ、MyRealTrip内の商品ページに接続されて簡単に予約できる仕組みだ。

また3月にはChatGPTがプラグインを発表し、ChatGPT内で複数のウェブサイトとやり取りできるよう実装した。このとき発表されたプラグインには、宿泊施設と航空券を予約できるOTAのExpediaとKAYAK、食料品配送企業のInstacartなどが含まれた。
プラグインは、コンセントに抜き差しするプラグのように、ソフトウェアに機能を追加する仕組みだ。一種の拡張プログラムを指す。プラグインをインストールすれば、ChatGPT内でユーザーが必要とする情報や機能を他のウェブサイトから呼び出せる。
百聞は一見に如かず——ChatGPTでExpediaプラグインを実行してみた。
_「オーストラリア旅行の日程を提案して」_と入力すると、ChatGPTがExpediaに接続し、実際の航空券・価格・ホテル情報を提示し、Expediaリンクから簡単に予約できた。
米IT専門誌Fast Companyは、ChatGPTのプラグイン発表を「OpenAI版App Storeの誕生を目撃した」と表現した。誰でもアプリを開発し売買できるようにしたApp Storeのように、ChatGPTプラグインはAIエコシステムを爆発的に成長させる可能性が高い、という意味だ。
3. ChatGPTが旅行・観光業界にもたらす変化
では近い将来、ChatGPTは旅行・観光業界にどんな変化をもたらすだろうか? すでに進行中の変化に、可能性をひとさじ加えて未来を展望してみた。
1) 旅行先の提案とカスタマイズ旅行計画
先の事例でわかるように、現在ChatGPTが多く活用されている分野は旅行先の提案だ。予算やスケジュールに応じた詳細プランも立てられ、自分にぴったりの旅行計画を提供してもらえる。
さらに進んで、もし自分のSNSと連携したらどうなるか? 尋ねなくても、私の好みにカスタマイズされた計画を立ててくれるだろう。SNSに旅行地関連の投稿をすれば、提案された旅行先へ自動的にフィードバックする効果もある。
2) 旅行計画の立案から予約まで
プラグインを接続すれば、旅行計画と同時に航空券、ホテル、旅行商品などの予約まで一気通貫で可能になる。プラグインは今後も拡張される予定だという。
個人の好みとデータに基づくカスタムサービスが可能になり、人々は同じ旅行先でもそれぞれ異なる旅行体験をするだろう。いわば**「私だけの旅行秘書」**の誕生といえる。
3) 旅行プロセスのマネジメント
最近、台風によりグアムで飛行機が飛ばず、旅行客が孤立する事態があった。済州島も天候の影響で旅行客がしばしば足止めされる。
API連携(ソフトウェア間の接続)を通じてChatGPTで旅行先のリアルタイム状況を把握できたらどうだろう? 現地状況をリアルタイムでモニタリングし、旅行コースを変更するなど、事前に対処できる。つまり、旅行の全プロセスを管理できるようになる。
4) 多言語通訳・翻訳の提供
おそらく馴染みのない旅行先で展示やミュージカルを観て、_「だいたいわかるけど、言語に集中して落ち着かない」あるいは「何を言ってるかよくわからない」_と思った経験があるだろう。慣れない言語圏ならなおさらだ。
スタンフォード大学の学生たちが研究しているARスマートグラスを活用すれば、ChatGPTが言語を認識して字幕表示することも十分可能に見える。外国人も韓国語の公演を100%理解できる日は遠くない。
「旅行は確率アイテム。天気、交通状況などで最高の確率と最悪の確率が共存する。ChatGPT(あるいは生成AI)は100%ではないが、個人の好みと状況に合わせて90%以上の良い旅行体験を作れるだろう。観光をマネジメントする役割だ」
—『GPT Generation』著者 イ・シハン教授
4. AIは未来ではなく現在

ChatGPTのような超大規模AIが旅行・観光業界にもたらす変化をChatGPTに尋ねたら、上記のような回答を返してきた。先に述べた内容とかなり似ていると感じるだろう。

「『GPT Generation』執筆時、『今後1年以内にこうなるだろう』と展望したが、本当に速いスピードで発展し、いつの間にか現状になった。今日展望として語った部分も、1カ月後の話かもしれない」
—『GPT Generation』著者 イ・シハン教授
AIは遠い未来ではなく近い未来、そして今、私たちの周囲を変えつつある。
生成AIに慣れる消費者、つまり旅行客も急増するだろう。これまで検索ポータルやSNSを活用して旅行計画を立てていたが、今後は生成AIを通じた検索・情報収集がより自然になる。
急速に発展するAI時代に、どうやって旅行客を惹きつけ、AIを通じてより良いサービスを提供できるか——検討すべき時だ。
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*本コンテンツは韓国観光公社主催「2023観光産業デジタル革新オープンセミナー」講演内容の一部を抜粋・再編集したものです。