TL;DR

ゲストハウス運営の現場を渡り歩いた筆者が断言する。良い宿と悪い宿を分けるのは設備でもコンセプトでもなく、「顧客満足」への配慮ただ一点だ。オンライン予約が主流の今、評判が先行する業界で生き残るには何が必要か。

06. 世の中には良いゲストハウスもあれば、悪いゲストハウスもある。

Writer 宿所発電所 運営統括 CHLOE (https://brunch.co.kr/@merrychloemas)

Editor ONDA ソモラ マネージャー

宿所発電所 運営統括 CHLOE

こんにちは。ゲストハウスの運営代行と教育を専門とする宿所発電所の共同代表兼運営統括を務めるCHLOE(クロエ)です。

最初はゲストハウスのスタッフとして宿泊業界に足を踏み入れ、フランチャイズゲストハウスの統括マネージャーや宿所統合予約管理サービスONDAの営業・パートナーサポート業務を通じて視野を広げました。そして今は再びゲストハウス運営に集中し、その世界の中で懸命に働いている宿の運営者でもあります。宿で様々な役割を果たしてきた経験と、多彩なコンセプトの宿を運営してきた経験をベースに積み上げた宿運営のノウハウを、多くの方々に広くシェアしたいと思っています。

Photo by Annie Spratt on Unsplash

2015年からゲストハウスに関わる仕事をしながら、全国各地の数多くのゲストハウスを訪ねてきた。しばらくはゲストハウス予約管理サービスを販売する営業担当でもあり、時にはゲストハウス運営者を教育するコンサルタントでもあった。ゲストハウスを訪問するたびに共通してした思いは、「今日私が行く場所が、どうか良いゲストハウスでありますように」だった。

私の仕事はゲストハウスがより良い宿になるように手助けすることだったので、いざ私がやることがあまりないと少し残念ではあるが、一方で「こんなに素晴らしい宿があるなんて!」と安堵する気持ちもあった。教育を依頼されて訪れた宿の中には、すでに運営がうまくいっていて逆に私の方が多く学んで帰るケースや、どうやってここまで考えたのだろうと思うほどゲストの満足を最優先に考え抜いているホストも多かった。一方で、本当に眉をひそめたくなるほど悪い宿が多いのも事実だった。

残念ながら商売がうまくいかない、または評判の良くない宿には共通点があった。それはまさに**「顧客満足」への配慮がないこと**だった。「うちの宿に来るお客様に、どうすれば満足してもらえるだろうか?」と一度でも考えたことがあれば当然わかるはずの、そんな基本的なことさえ整っていない宿は、「悪い宿」と評価されても仕方ないと感じる。

旅行というものは、誰かにとっては時間を削り、誰かにとっては大きな費用を投じなければならない特別な体験だからこそ、ほとんどの人は旅行ですべてが完璧であることを望む。宿もまた当然ながら完璧であってほしいものの一つだ。私が選んだ宿は清潔であってほしいし、ホストが親切であってほしいし、立地が良いことを望む、などなど…。お客様が宿に期待する部分が満たされれば、旅行の満足度は一段と高まる。

ほとんどの人は旅行ですべてが完璧であることを望む。(出典: pixabay)

けれども実際に旅行してみるまでは、旅行が自分の思い通りに進むのか、それともまったく違う方向に流れるのか、絶対に断言できない。同じように、宿も自分が思っていたものとはまったく違う設備を備え、まったく異なるサービスを提供することもある。こうした期待と現実の間にギャップが生じる理由は、ほとんどの宿予約がオンラインで行われるからだ。宿に直接行って予約する人はほとんどいないため、私たちは予約サイトやホームページを通じて宿の情報、写真、レビューなどを確認し、良い宿と悪い宿を見分けなければならない。

だから多くの人は、すでに評判の良い宿を選ぼうとする。そうすれば失敗を減らし、楽しい旅行ができるからだ。それでも、良い宿を見つける100%確実な方法が宿の評判だとは言えない。宿のレビューは先に経験した人々が残すそれぞれの考えであり、経験とは相対的なものなので、誰かにとって満足な部分が誰かには不十分に感じられることもあるのだ。

多くの人は、すでに人々に認められた評判の良い宿を選ぼうとする。(出典: pixabay)

最近、急に地方へ出張することになり、チェックイン前日に宿を予約した。急いで選んだ宿だったが、特にネガティブなレビューもなく、価格も予算内に収まっていたので大きな悩みなく選んだ。さらにこの宿の大きな利点は、海辺に位置し昼も夜も素晴らしい眺望を誇る、ビューが非常に良い場所だということだった。移動時間が長かったので、出張先に着くとすぐ宿へ向かった。突然暑くなった天気のせいで宿に着くなりエアコンを作動させたが、エアコンがトラブル続きだった。明らかにチェックイン時に特別な案内を受けていなかったので変だと思い、すぐホストに尋ねた。ところが返ってきた答えがあまりに荒唐無稽だった。エアコンが故障していることを今日になって初めて知ったとのことで、当日の修理は難しいという。しかも希望すれば返金すると言う。果たしてこの回答がベストなのかと思った。

まず、明らかにエアコンに問題が生じたことを(チェックイン時間がだいぶ過ぎて到着したので)チェックイン前に案内できる時間が十分あったにもかかわらず、何も言及せず入室させたのが残念だった。また、今夜泊まる宿がなくなったゲストに返金するより、問題が生じた客室の代替宿を探してあげることこそホストの務めではないかと思った。眺望だけはレビュー通り素晴らしかったが、その眺望が宿の不便さを相殺してくれることはなかった。明らかに良い宿だという評価を見て予約したのに、残念ながら私の期待とは異なる経験をすることになった。この宿は私にとって「ビューだけが良い悪い宿」として記憶されるだろう。

この宿は私にとって「ビューだけが良い悪い宿」として記憶されるだろう。(出典: pixabay)

おそらくほとんどの人がこれと似た経験があるはずだ。選びに選んだ宿が期待と違ったり、宿で予想外の問題に遭遇して困った状況を経験したなら、その宿は「悪い宿」として記憶される。上記の状況でさらに残念だったのは、物理的な問題ではなくホストの対応だった。すでに発生した問題をより大きな問題として受け止めさせたのが、まさにホストの対処だったからだ。エアコンの故障は意図的なものではないのでやむを得ない部分として理解できても、ホストの対応はいくらでも変えられる部分なので、ホストが問題解決にもう少し積極的であれば、きっと「良い宿」として残ったかもしれない。

では、いったいどんな宿が良い宿で、どんな宿が悪い宿なのだろうか?

これまで様々な宿を経験し感じた点をもとに、良い宿と悪い宿の特徴を整理してみた。

一つ目、良い宿は勤勉である。

旅行産業はトレンドに非常に敏感なため、刻々と変化する旅行者のニーズを素早く把握することが重要だ。**良い宿はこうした旅行者の変化に敏感である。**したがって、良い宿は旅行者のニーズに応じて勤勉に様々な試みを行う。単に旅行者の言葉に振り回されるのではなく、実際に旅行のトレンドがどう変わっているのか常に勉強し、自らが旅行者になって経験しながら宿の運営に活かすのだ。

また、勤勉な宿は旅行者が残した**レビューに素早く対応する傾向がある。**お客様が予約サイトやホームページに残したレビューにどう返信するかで、宿のクオリティを推し量ることができる。宿でレビューがどれほど重要な資産かは、すでに何度も言及したように、何度強調しても過ぎることはない。一方、悪い宿は旅行者の声に関心がない傾向がある。したがって施設やサービスの改善も非常に遅い。オンラインで宿のレビューを確認する際、ネガティブなレビューを発見した場合は、必ずレビューへの返信まで確認するのが良い。単に不便さに対する謝罪なのか、それとも今後不便さを改善していくつもりなのかなど、宿の運営者の考えを垣間見ることができる。

レビューだけでなく、勤勉な宿は宿の情報やニュースなどを継続的に更新し、実際に提供するサービスとオンラインで露出される情報の差を最大限縮めようとする。だから良い宿は「生きている」という感じがすることもある。しかし悪い宿は、最初のオープン時に撮った写真と情報をオープンから2〜3年経っても変わらず使用している場合が多い。こうしたケースでは、オンラインで提供される情報と実際の宿の施設・サービスが異なり、物議を醸すこともある。止まっている宿にならないためには、個人の日常をSNSに更新するように、宿の情報も随時更新してあげるのが良い。

良い宿は「生きている」という感じがすることもある。(出典: pixabay)

二つ目、良い宿はスタッフの勤続期間が長い。

通常、ゲストハウススタッフの勤続期間はかなり短い方だ。パートタイマーとして勤務するスタッフが多いため、短くて1〜3ヶ月から、1年未満の場合もざらにある。**スタッフの勤続期間が長いということは、勤務環境が良いという意味であり、したがってスタッフが提供するサービスの質が高い傾向がある。**経験とサービスは概ね比例する。長い時間、宿について考えてきたスタッフは、宿に適したサービスが何かをよく知っている。したがって突発的な状況でもより巧みに対処し、顧客の満足度を高めることができる。また、長く勤務しているスタッフは宿への愛着と責任感が大きい傾向があるため、宿の評判についても関心が高い。スタッフが長く勤める宿は、一つの有機体のように秩序と体系で動いていく。

スタッフが頻繁に入れ替わる宿は悪い宿と言える。スタッフの勤務環境が整っておらず、安定したサービスを提供しにくいように見える。スタッフが頻繁に変わる場合、人員の空白が多くサービスが不安定になり、スタッフが不安定なら宿に滞在する顧客も不安定さを感じるほかない。私たちの宿は、スタッフあるいはホスト自身が安定したサービスを提供できる勤務環境が整っているのかについても確認する必要がある。

スタッフが長く勤める宿は、一つの有機体のように秩序と体系で動いていく。(出典: pixabay)

三つ目、良い宿はコミュニケーションがうまい。

良い宿は**ゲストの要望に迅速かつ正確に対応する。また、良い宿は顧客より一歩先んじて顧客が必要とするであろう情報を分かりやすく提供する。**宿は完成品ではない。基本的な設備は完成品で構成されているが、宿はホストが完成品を活用してセッティングした状況と雰囲気を体験して帰る場所だ。したがって、受け取る人によって、あるがままを楽しむ人もいれば、特別な助けが必要な人もいる。

良い宿は**「今日のゲスト」が必要としているものを把握し提供できる心遣い**を備えている。最近放送された旅行バラエティ番組「スペイン民宿」で、スペイン巡礼路を歩く巡礼者たちが滞在する宿を直接運営する姿が映し出された。彼らは巡礼者が来るたびにチェックイン過程でその日の食事メニューをあらかじめ案内し、海産物を食べられない巡礼者にはあらかじめキッチンチームと協議して海産物の入っていない料理を提供した。良い宿の例を示す場面だった。すべてのゲストの要望を100%聞き入れることは現実的に不可能だが、ゲストとコミュニケーションを取りながら、より快適で満足のいく宿泊体験ができるよう手助けすることが良い宿の姿だ。

一方、悪い宿は**ホストおよびスタッフを見つけにくい、または連絡がつきにくい。**宿を利用している間にお湯が出ない、停電するなど困った問題が発生した時、コミュニケーションが困難であれば最悪の宿として記憶されるだろう。実際に宿を運営していると、宿泊中のお客様から時折深夜に連絡が来ることがある。ドアが施錠された、パスワードを忘れた、ボイラーが故障したなど予想外の様々な問題が発生するが、私たちはそのたびに即座に駆けつけて問題を解決したり、代替策を提供して不便を最小限に抑えてきた。

良い宿は「今日のゲスト」が必要としているものを把握し提供できる心遣いを備えている。(出典: pixabay)

もう一つの事例としては、スタッフ間のコミュニケーション失敗によって顧客に不便を強いた悪い宿もあった。計4泊する顧客がまず3泊は友人と一緒に宿泊し、最終日は一人で宿泊しなければならず客室を移動する必要があった。ところが昼に勤務するスタッフはチェックアウト時間にすぐ客室を移動できると案内し、肝心の当日午前に勤務したスタッフは即座の移動は不可能だと案内したのだ。彼らはこうした場合に備えた顧客案内事項が整理されていない状況で、それぞれ異なる説明で顧客を混乱させ不便にし、結局最悪の宿という評価を免れなかった。

実際にこうした状況はかなり頻繁に発生する。スタッフ同士のコミュニケーション失敗が、顧客とのコミュニケーションまで影響を及ぼすのだ。大半の良い宿は顧客対応マニュアルが用意されているため、上記のような特別な要望が発生した際にはどう対処するのが良いか、すべてのスタッフが共有して把握している。または、リアルタイムで共有できるシステムが整っている。私たちの宿が悪い宿と評価されないよう、顧客とのコミュニケーションにおいては特に多様な状況をシミュレーションして備えることをお勧めする。

時には宿を運営しながら、悪い宿と評価される悔しい状況も生じる。例えば、夏の繁忙期に海辺に位置する宿を運営していた期間、宿とは関係のないことでネガティブなレビューを受けたことがある。宿の前には夏の休暇シーズンに合わせて旅行客におやつを販売するトラックがあった。ところがある宿泊客がそのトラックでトウモロコシを購入し、トウモロコシがあまりに高くて不快だったというレビューを宿のレビューに残したのだ。宿で販売している商品ではなかったため誤解がないよう願いながら返信を残したが、荒唐無稽ながら面白い経験だった。良い宿と悪い宿と評価する基準は人それぞれ異なり、時には旅行の経験が宿の評価に影響を与えることもあるということが分かった。

良い宿と悪い宿を評価する理由は本当に人それぞれだ。(出典: pixabay)

例として挙げた経験は少し例外的なケースだったが、実際に良い宿と悪い宿を評価する理由は本当に人それぞれだ。各々が重要だと考えることが異なるからだ。立地さえ良ければ満足する人もいれば、トイレの清潔度を最も重要視する人もいる。だから良い宿と評価されることは常に悩みとなる難しい課題だ。しかし、宿を運営する人であれば、「どんな宿が良い宿なのか」について当然悩み、また悩むべきだ。もちろんホストの立場からではなく、顧客の立場で。

[連載目次]

(ゲストハウスの人の物語) 01. プロローグ + 私はゲストハウススタッフです。 02. ゲストハウススタッフの一日、密着取材25時間。 03. ゲストハウスになぜ「ゲスタッフ」が生まれたのか? 04. ゲストハウスに最も必要な一つのこと、人。

(ゲストハウスの運営の物語) 05. ゲストハウス社長たちの悩み 06. 世の中には良いゲストハウスもあれば、悪いゲストハウスもある。 07. 運営がうまくいく宿には「あれ」がある。 08. ゲストハウススタンダード

(ゲストハウスの創業の物語) 09. ゲストハウスは宿泊業か、サービス業か、不動産業か。 10. ゲストハウス運営者のDNA 11. うまくいく人はうまくいく? うまくいく宿はうまくいく! 12. それでも私はゲストハウスを愛します。

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