ホテル業界が人手不足を解決するには、スタートアップに学ぼう?

最近、ホテル業界の求人難は深刻です。人材が集まらない理由は、▲労働強度に見合わない給与、▲コロナ禍で浮き彫りになった雇用の不安定さ、▲ホテリアという職業への憧れの喪失など、いくつも挙げられます。
原因は複数ありますが、はっきりしていることが一つあります。
人件費の問題にせよ、変わってしまったホテル業界の地位にせよ、もはや過去と同じ人員でホテルを運営できる時代ではなくなりました。もっと冷静に言えば、ホテル・宿泊業は今後ますます少ない人員で運営せざるを得なくなるでしょう。
実はこれ、ホテル業界に限った話ではありません。どの産業も共通して抱える問題です。技術が進化するにつれ企業の雇用規模は縮小し、組織が小さくなっていくのは避けられない未来であり、冷酷な現実でもあります。
こうした流れの中で、一人当たりの業務効率を最大化するさまざまなSaaS(Software as a Service)プログラムの利用が当たり前になりました。最近ビッグトレンドとして浮上した「ChatGPT」のようなAIサービスを使って業務効率をさらに引き上げる手法も次々と登場しています。

全産業がこうした方向へ変わっているため、「ホテル」だけが例外ではいられません。ただし、「ホテル」がこの急激な変化に対応できる状態になるよう、努力が先行しなければなりません。
急激な業務変化によって組織内に反発や不適応、雇用不安の深刻化など、より大きな問題を引き起こす可能性があるからです。
だからこそ、ホテルという「会社」が新しいやり方を受け入れ、継続的に変化できる「企業文化」と「業務環境」を整えることが、同時並行で求められます。
ホテルはスタートアップに学べ
少人数で驚異的な効率を生み出す事業モデルがあります。短期間で10倍、100倍以上の成長を目指す「スタートアップ(初期ベンチャー企業)」です。
成功したスタートアップを見ると、「お金で時間が買えるなら買う」という姿勢でSaaSを攻撃的に導入し、一人が複数の役割を同時にこなします。また、ある業務の方向性が決まると「素早い実行」を最優先の美徳とします。

そのうえで、社員同士が互いに敬語を使い、ONDAをはじめ多くのスタートアップが英語名を使い、上下関係なく自由にコミュニケーションできる企業文化を作るために非常に力を注いでいます。
なぜこんなことをするのでしょう? MZ世代にアピールするため? 健全な企業文化が成長を導くから?
いいえ。答えは実はシンプルです。手段と方法を問わず、会社全体の業務効率性を最大化しないと会社が潰れるからです。
多くのスタートアップは初期に「私たちは新しい市場を開拓する」と言いますが、成長するうちに結局は大企業という競合に出会います。大企業がスタートアップの開拓した市場に参入するか、スタートアップがさらなる成長のため既存市場へ進出するか――必然的に起こることです。
この状況で、社員数・資本力・市場支配力・ブランド力・業界ネットワークも弱いスタートアップが、既存の大企業と似たやり方で仕事をし、似たような業務効率しか出せないなら? それはもう、潰れると言っているようなものです。
だからスタートアップは、小さな組織で極限まで効率性を引き上げる方法を見つけようと必死なのです。
もちろん、スタートアップの高い業務強度とストレスに耐えられず既存の組織へ去る人も多くいます。社会全体から見れば、スタートアップはまだ大企業ほど魅力的な職場とは言えないかもしれません。
ですが、そこには厳しい環境の中でも本当に情熱的に働く人が大勢います。ならば、「人手不足」に苦しむ多くの業界にとって学ぶべき点が確実にあるということではないでしょうか?
繰り返しますが、生き残るため、さらに成長するための方法として、さまざまなSaaSや協業ツールを導入しているわけです。こうして導入されたシステムと相まって、業務効率を最大化するため「コミュニケーションは水平に、責任は決定した人が負い、素早く実行する」業務文化がスタートアップ全般に広がったのです。
MZ世代が共感する文化を作るために「スタートアップらしい」企業文化が生まれたのではありません。どうにか生き残ろうと作ってみたら、今のトレンドと合致し、MZ世代が「こういう会社なら行ってみたい」と思えるものになった――それだけの話です。
最後に、こうした話はソフトウェア職種やオンライン中心の企業にしか当てはまらないのでは、という疑問もあるかもしれません。実際、コワーキングスペースなど多くのオフライン中心のスタートアップも生まれています。事業モデルが重要なのではなく、「どういうやり方で会社を運営するか?」のほうがはるかに重要だということを強調したいのです。

歴史ある企業、硬直した業界でスタートアップのように働く方法
私はONDAに入社する前、産業全体でも非常に硬直した業務スタイルを誇る報道業界で長年働いていました。だから、すでに長い間同じやり方で働いてきた組織が変わることが、想像以上に難しいことをよく知っています。
私の経験上、既存組織の変化は「下からの変化」ではなく「上からの強力なリーダーシップ」による変化だけが答えだと思っています。 実際、スタートアップも創業者の強力なリーダーシップがなければ、先ほど述べたような業務スタイルは不可能です。
私が最も信用しない言葉が「新人の活気」「MZ世代の創造性」などです。
会社は明らかに決められたルールに従って動いているのに、活発な若手人材が入ってきて既存のやり方を自ら拒否して成果を上げるなど、ほぼ不可能です。もし可能な人材がいるとしても、わざわざ会社で決められた月給をもらいながら勤める必要はなく、起業を選ぶでしょう。
だから、既存の会社が変わろうとするなら、合理的な理由をリーダーが明確に提示しなければなりません。
既存業務スタイルの「不便」を発見し、トップから変化を実践し、業務を効率化するソリューションを探す。そして、こうした変化に耐えられる社内の雰囲気づくりと企業文化の正解を見つけていくこと――これが私の考える「人数が減った組織が効果的に働く方法」です。
ピラミッド型の階層構造が明確な大企業ほど、迅速で劇的な変化は難しい。
しかし日立やGEの事例でも確認できるように、 巨大企業もトップダウン経営によって必要な変化に十分成功できる。
ただし、トップダウン経営に乗り出したリーダーは不満と恨みを聞きやすい。 ボトムアップに比べて明らかに歓迎されない選択だろう。
**米国の教育コンサルタント、リチャード・デポーはこう語る。
「大半の企業がトップダウン経営を基本としているにもかかわらず、 経営者たちは『トップダウン型リーダー』というレッテルを嫌がる。
だが、物事が実現されるために必要な権威を 積極的に行使することがリーダーの義務だ」** ——トップダウン・リーダーの宿命を強調している。
(出典:LG経営研究院)
今、自社の業務スタイルの中で非効率な部分を見つけ出し、部下に「代案を探してこい」と指示するのではなく、自ら組織に合ったより良い方向性を示さなければなりません。
会社に長く勤めた人ほど、そして経験豊富な人ほど、どこに非効率性の根源があるか、会社が受け入れられる変化の線引きをよりよく知っているのではないでしょうか?
既存で使っていた業務報告方式・他部署との協業方式・販売プログラムなどを、最近登場した協業ツールやSaaSに切り替えれば、自社の既存メンバーの生産性が何パーセント上がるというシナリオは、リーダーが提示してこそ実行可能な「合理的な理由」になります。
もし主任、代理、課長、部長といった役職を使っていた組織が、みんなで「ジュノさん」「ヒラさん」と呼び合う方式に変えたり英語名を使う組織に変えたりする時、「最近のMZ世代はこうしないと会社に来ないそうだ」と言うのでは説得力に欠けます。
国内外を問わず高い生産性を引き出す業務用ソフトウェア(SaaS)は、**「責任と指示は垂直的でも、コミュニケーションは自由に、実行は速やかに」**といった企業文化が定着した時に最も効率を発揮するようデザインされています。
業務ツール内で上司を自然に「タグ」して質問したり(例:@jack ジャック、この件はこう処理しましょうか?)、業務を議論できる雰囲気が醸成されなければなりません。その文化的装置として呼称の変化が必要なのです。もし呼称変更なしでも自由に協業ツール内でコミュニケーションできるなら、わざわざ変える必要はありません。今、私たちがより良く働くことが重要だからです。
どんな方式であれ、先に述べた**「責任と指示は垂直的でも、コミュニケーションは自由に、実行は速やかに」が可能であれば、**ホテルが新たに導入しようとする業務方式と業務ツールの効率性を最大化できるはずです。
MZ世代が満足する職場ではなく、
「今の私たち」が満足する職場
こうして既存組織の業務スタイルを変えるプロセスには、数多くの試行錯誤が避けられません。変化には失敗がつきものです。
実際、ONDAでさえ、この2年間で3回以上の組織改編を経験しました。私の仕事も継続的に変化または拡張され、名刺に刻まれた職務や役職も4回以上変わりました。
先ほど言及したスタートアップ業界で最も代表的な成功モデルといえば、「配達の民族(배달의민족)」で知られる優雅な兄弟たち(우아한 형제들)が挙げられます。

この組織の働き方が詰まったポスターが大きな話題になったことがありました。しかし、このポスターの内容も、初めて出た時から5年前とは変わっています。そして確認はできませんが、今も変わり続けているはずです。
どんな組織も完璧ではありえないから、変わり続けるのです。
そしてこの会社はこう言います。**「(会社が)平凡な人々が集まって非凡な成果を生み出す場所になるよう、健全な組織文化をつくることに真剣に取り組んでいます」**と。
良い組織は個人の弱点をカバーできるという信念を持っているということが分かります。つまり、組織がうまくセットアップされていれば、個人の生産性は最大化し、ミスは最小化できるということです。
わざわざMZ世代を採用して働かせる必要があるでしょうか? すでに会社に愛着を持っていて、仕事をよくこなす人に、過去よりも少ない努力で効率的に働ける環境を作れば、わざわざ追加で人を雇う必要はないでしょう。
そして、そのホテルは、ホテリアを志望するMZホテリアたちの憧れのホテルになるのではないでしょうか?