宿泊施設の「本当のマーケティング」は、コンテンツから始まる
18年のキャリアを持つMICE専門家が見る、ホテル・旅行業界
06. 宿泊施設に独自コンテンツが必要な理由
Writer : シン・ソンチョル Moment Studio 代表
Editor : ONDA イ・チェウン マネージャー
前回、コロナ後のMICE産業トレンドを見ながら、ゲストをより長く滞在させるには、結局自社独自のコンテンツを開発する努力が必要だとお話ししました。では、なぜコンテンツ開発が必要で、宿泊施設は何を準備すべきなのでしょうか?

最近新しくオープンするホテルや宿泊施設を見ると、インフルエンサーと宿泊券イベントを実施するケースが多くあります。これはインフルエンサーのフォロワーに施設を宣伝する手段で、通常SNS投稿のシェアやコメント記入で参加が行われます。
しかし、単なる一回限りのイベントなので、終了後にバイラル効果を期待するのは難しい。さらに、イベントの目的はバイラルで予約を増やすことなので、予約につながらなければ効果的なプロモーションとは言えません。
宿泊施設を運営する方々が、インフルエンサーとのコラボでこんな風におっしゃることも。
「いい感じに、きれいに仕上げてください。」
もちろん、SNSでは写真が非常に重要です。しかしそれ以上に、なぜその地域に施設を建てたのか、どうしてその形態にしたのか、そしてゲストに何を感じて帰ってほしいのかを説明することが、_「いい感じに、きれいに仕上げてください」_という言葉より、はるかに施設をよく表現するのではないでしょうか?
だからこそ、宿泊施設独自のコンテンツが必要なのです。 短期的な宣伝のためのコンテンツではなく、施設を知らせ、人々の記憶に残るコンテンツが。
コンテンツに必要な要素
では、コンテンツのために何を準備すべきでしょうか?
- ストーリー
- 哲学と信念
- 施設の定義 — ゲストが得られる体験と価値
第1回の連載で、あなたの施設をどう定義するかについて考えるべきだとお話ししましたが、皆さんなりに施設について下した定義がコンテンツにつながります。コンテンツには差別化とストーリーが必要で、それは施設を運営する人の哲学や信念から生まれるからです。
また、こうした哲学や信念が施設運営に溶け込んでいなければなりません。ゲストが再訪したり、他の人に勧めたりする理由になるのですから。
この記事を書く間、ONDAのパートナー施設でもある済州の「ベッド ラジオ」に宿泊したのですが、ベッド ラジオの設立ストーリーが非常に興味深かったので、この施設を例にコンテンツ開発に必要な要素を一つずつ見ていきましょう。
1) ストーリー
先ほど述べたように、_「いい感じに、きれいに仕上げてください」_のような言葉より、誰もが持っていない自分の施設だけのストーリーを語らなければなりません。
ベッド ラジオのキム・ジユン代表から、ベッド ラジオが持つストーリーを聞くことができました。
「以前スタートアップで働いていた時、出張で済州を訪れることが多かったのですが、予算が多くなかったのでモーテルやゲストハウスを選ぶことがほとんどでした。若かったこともあり、ゲストハウスのようにおしゃべりしながらビールを飲みたい気持ちもあったし、一方で一日中仕事に追われていたので休みたい気持ちも大きかったんです。
そこで『なぜ適度な価格で、快適に眠れて楽しく過ごせる宿泊施設はないのか?』という疑問が生まれました。旅行が日常になったミレニアル世代に、自分のライフスタイルを作るツールとなり、合理的な価格で宿泊空間と旅の体験を提供するため、ホステル『ベッド ラジオ』を運営することになりました。」

実は、ベッド ラジオの設備が5つ星ホテルのように優れているわけではありません。むしろ済州でもっと素晴らしい宿泊施設を見つけるのは簡単なこと。しかし、こうした価値を持つ施設に簡単に出会えるわけではありません。
また、このストーリーからわかるように、ベッド ラジオが追求する価値の一つがソーシャライジングです。ゲストが集まって会話し、旅の疲れを癒す時間のために、単に空間を提供するだけでなく、様々なプログラムを開いて参加できるようにしたそうです。施設のストーリーが持つ「本当の価値」を伝えているのです。

2) 哲学と信念
ベッド ラジオの哲学は「私たちは『異なる』個人から尊重される多様性の社会を目指す Explore different」だそうです。この哲学は、個室、ドミトリー、ファミリールームのように客室を細分化し、多様な形の旅行者を尊重することから感じられました。
例えば、4人家族が5つ星ホテルを利用するとしましょう。子どもが小さいうちはツインルームを使い、成長するにつれてエキストラベッドを利用したり、2部屋予約することになるでしょう。
しかし、ベッド ラジオは家族が離れて寝たり不便を我慢したりすることを避け、ファミリールームを通じて家族旅行客のニーズを満たしています。
施設の哲学を実際の運営で一致させることも、コンテンツを作る上で重要な要素です。 「私たちの哲学は多様性を尊重することです」と言いながら、「ダブルベッドとツインベッドしかありません」、あるいは「4人家族なら客室2つを利用してください」といった話はしてはいけないでしょう。

3) 施設の定義 — ゲストが得られる体験と価値
もう一度、皆さんに質問します。あなたの施設をどう定義しますか? また、ゲストにどんな体験をして帰ってほしいですか?
ベッド ラジオは、1) ストーリーで少し触れたように、創業時から宿泊客のためのソーシャライジングプログラムとして、朝のヨガやランニング、海での水泳など多様に運営しているのですが、
宿泊空間としての体験とコンテンツを組み合わせ、「Tune up your life」というスローガンとともに、人生をチューニングする場所として、さらに拡張された意味の宿泊施設を定義しています。だからこそ、一度ベッド ラジオでヨガをしたり、お香を作ったりと何かを体験したゲストは、済州に再訪する際に必ずベッド ラジオを訪れたくなるのです。


コンテンツはどう作るべきか?
ベッド ラジオの例でコンテンツに必要な要素を見てきましたが、ではコンテンツはどう作るべきでしょうか?
シンプルに考えれば、1) ストーリー、2) 哲学と信念、3) 施設の定義を組み合わせればいいのです。最初から完璧な文章や画像、映像を大げさに準備する必要はありません。自分のストーリーをソーシャルメディアで伝えれば、それ自体がストーリーのあるコンテンツになるのです。 コンテンツが込めているのは「うちの施設、きれいでしょ?」のようなイメージ的な側面ではなく、施設の価値なのですから。
他の人が語ることも重要ですが、結局「自分たちのストーリーを、自分がどう語るか?」が最も重要です。施設を代表する公式ソーシャルメディア(ブログ、YouTube、Instagramなど)を運営することをお勧めします。
インフルエンサーより、コンテンツクリエイターとのコラボ
旅行コンテンツを作る人間として、宿泊施設運営者の皆さんにお伝えしたいのは、宣伝とマーケティングのためにインフルエンサーと宿泊イベントをしているなら、今すぐやめた方がいいということです。代わりに、あなたのストーリーと哲学と信念、体験と価値を、インフルエンサーよりうまく伝えられるクリエイターとコラボすることをお勧めします。


インフルエンサーはモデルで、クリエイターはプロデューサーのPDのようなものだと思います。インフルエンサーは写真がきれいに撮れてフォロワーが増えることを重要視します。「フォロワーが20万人で、露出が30万回です」と言いますが、本当に重要な部分ではありません。
結局、その数字から宿泊予約につながることが重要なのに、露出が多いだけで本当にいいのでしょうか? 露出が多くなくても、コンバージョンを導くことがより重要だと思います。有名インフルエンサーに施設を提供することも時には効果的ですが、長期的な観点では忘れられがちです。
したがって、継続的なコンテンツを考え、さらにコンバージョンまで考慮するクリエイターとのコラボの方がいいでしょう。また、もしかすると旅行クリエイターとのコラボより、接点がなさそうな分野のクリエイターとコラボすることが、意外にも大きな効果をもたらすかもしれません。

📖 連載目次
03. エンデミック時代への転換、今はコスパよりコスパフォーマンス旅行
06. 宿泊施設に独自コンテンツが必要な理由
⚠️ 無断転載・再配布禁止。引用時は「ONDA(온다)」と明記してください。