宿泊施設やホテル単位で実践できる具体的な『カーボンフットプリント削減』の方法とは?
エコフレンドリー、サステナブル・トラベル。気づけば当たり前のように耳にする言葉です。2〜3年前のホテル・宿泊業界にとっては、流行のトピックのひとつに過ぎなかったかもしれません。
ところが2022年現在、ヨーロッパを中心とする欧米諸国、観光業が主力産業の東南アジア各国では「サステナブル・トラベル」はもはやマーケティング用語ではなく、「生存」の問題として語られています。
人気経済YouTuberシュカワールドの「気候大災害、エネルギー消費を減らすための壮絶な努力」を見ると、米カリフォルニアでは気温が50度を超え、昨年ドイツでは1000年ぶりの豪雨で160人が亡くなったといいます。先進国でもこれだけ目に見える被害が出ているのですから、途上国の状況はさらに深刻でしょう。

まだ四季が明確で、海面上昇などの直接的な脅威がない日本とは対照的に、先進国も途上国も関係なく「気候危機」は生存権を脅かす段階に入っているのです。
テスラを皮切りに自動車業界が「環境配慮型EV」競争に命をかけているのと同じく、ホテル・宿泊業界の「サステナブル・トラベル商品開発」は、もはや先延ばしにできない課題となりました。
特に近年は「カーボンフットプリント」という用語で、サービスの原料採取・生産・輸送・流通・使用・廃棄まですべての工程の環境影響を定量的に示す制度が、産業全体で強調されています。
移動、宿泊、アクティビティ、レストラン等、ホスピタリティ産業のあらゆる領域がカーボンフットプリントと無縁ではいられません。旅先で快適に使い捨てる分だけ、快適な自然を楽しみながら旅できる空間と時間が失われていくのですから。
「サステナビリティ」を全面に掲げるグローバルOTAとホテル
ホスピタリティ産業全体で現在「サステナビリティ」を最も前面に押し出しているのは、グローバルOTA(Online Travel Agency)企業です。最近、米ホスピタリティソフトウェア企業クラウドベッズ(Cloud beds)が「The Big Book of OTAs」というOTA業界レポートを公開しました。
2022年の最重要OTAトレンドのひとつに、「サステナビリティバッジ付き宿泊施設」と「ロングステイ」を挙げています。 旅行者の73%が「サステナブル・トラベル・バッジ」付き施設への滞在を望んでおり、こうした消費者を満足させるためにBooking.comやExpediaがあえて「サステナブル・トラベル」カテゴリーを新設したと説明しています。
たとえばBooking.comは、宿泊施設に対して32項目のサステナビリティ基準を提示しています。特定条件をクリアすると「実践施設」のバッジが付き、下の写真のようにカテゴリーを別に分けて表示されます。この環境配慮型カテゴリーが、欧米圏を中心に旅行者の宿選びの重要基準になっているのです。

それだけではありません。2020年以降、メタサーチエンジンKAYAKは、旅行者が飛行機・列車等で移動する際に最も少ないCO₂を排出するオプションを推奨し始めました。Booking.comとKAYAKはこうしたサービスを連携し、旅行者が最もカーボンフットプリントの少ない旅行方法を選べるようサポートしています。
別のプラットフォームでは、航空会社別・ホテル別に「サステナビリティスコア」を測定してランク付けしたり、表彰したりもしています。

では、宿泊施設やホテル単位で具体的な「カーボンフットプリント削減」の方法とは何でしょうか?
2021年10月に発行された「Global accommodation sector, The road to net zero emissions」では、現在実装可能な最先端技術とサービスを使えば、個別宿泊施設が最大32%まで温室効果ガス排出量を削減できると説明しています。
たとえば、あるホテルが空調・暖房を効率的に管理するHVACシステムに170万ユーロ(約23億円)を投資すると、年間最大6万ユーロ(約8000万円)を節約できます。
プールのポンプシステムを1,000ユーロ(約133万円)で交換すれば、年間500〜600ユーロ(66万〜80万円)の節減が見込めます。

ほかにも窓を二重ガラスにしたり、遮熱フィルムを貼ったりしてもエネルギーを節約できます。ホテル運営車両をEVに切り替える、エレベーターを効率運用するソフトウェアの導入でもカーボンフットプリントを減らせます。
客室で提供するあらゆる使い捨て品を廃止したり、再利用可能なものに変えるキャンペーンも必要です。バンヤンツリー・グループは「再利用できないなら断って」キャンペーンで使い捨てプラスチック提供を廃止しましたし、アナンティはホテル内のプラスチック完全廃止プロジェクトを進めています。
客室ごとの食品廃棄量を制限する方針、ごみの分別回収もサステナブル・トラベルの必須課題です。
こうした投資と方針は初期段階では多くの費用と努力を必要としますが、カーボンフットプリントを減らせば結局はエネルギーと資源を節約する道になります。建物とサービスを効率的に運営することで、毎年多くの運営費を削減できるわけです。
また、サステナブル・トラベルを実践するホテルは優れたマーケティングポイントとなり、OTAでより多く露出される機会を得ることもできるでしょう。
グリーンウォッシングではなく、真のカーボンフットプリント削減を
今日の消費者は、お金を多く払ってでも「価値」ある消費を求めます。多くの調査で70〜80%超の人が「環境に貢献するなら追加費用を払う」と回答しています。SBS記事によると、2000年代初頭の環境配慮型小売市場規模はわずか1兆5000億ウォンでしたが、2020年には30兆ウォン規模と推定されています。
これは旅行市場全体にとって新たなビジネス機会でもあります。オンラインでのリアルタイム価格比較が可能になって以降、ほぼすべてのB2C事業が「最低価格競争」に追い込まれました。他より1円でも安く売らないと消費者の目に留まらなかったのが、今は「より良い価値」を提供すればより高い価格を出してもらえる「ガシムビ(価格対満足度)」の時代が開けたのです。
環境配慮型旅行、サステナブル・トラベル、カーボンフットプリント削減旅行は、すでに逆らえない大勢となりました。
市場が拡大するにつれ、環境配慮・サステナビリティ・カーボンフットプリントを掲げた偽装マーケティング、いわゆる「グリーンウォッシング」問題も増えています。排ガス量を操作した一部自動車メーカーの「ディーゼルゲート」、10数年前に全国民的な怒りを買った「加湿器殺菌剤事件」などが代表的なグリーンウォッシング事例です。
こういった問題が、旅行業では起こらないことを切に願います。旅行業は他のどの産業よりも環境配慮的でサステナブルでなければなりません。汚れたビーチと猛暑・豪雪で荒れた場所にバカンスに行きたい人はいないのですから。
⚠️ 無断転載・再配布禁止。引用時は「ONDA(온다)」と明記してください。