ホテルは不動産業と観光サービス業の両面を持つ。立地で勝負が決まり、初期投資は莫大、老朽化は驚くほど早い。人材も、部門連携も、在庫管理も一筋縄ではいかない。ホテル運営がなぜ難しいのか、開発者の視点で解剖する。
03. ホテル産業の特性
文:ポトゥラック (https://brunch.co.kr/@nicejty0)
宿泊業界のオンシーズン(繁忙期)、5月がやってきました。もともと5月は暖かい春の気候に、こどもの日、父母の日、夫婦の日(5月21日、二人が出会って一つになるという意味で21日に指定)など家族の記念日が多く、観光産業が活性化する時期。今年は振替休日(5月7日)やサンドイッチ連休も重なり、例年以上に観光地が賑わいそうです。私も久しぶりに家族と一緒に済州島旅行に出かけます。まず航空券予約を済ませ、宿泊先をどこにするか検討中。済州島の宿泊施設は日々進化しているので、今回は多様なタイプの施設を体験してみるつもりです。
さて、本格的にホテルストーリー第3弾を始めます。今日はホテル産業の特性について見ていきます。ホテル消費者の立場ではなく、開発者・運営者の視点から語っていきましょう。
「ホテル業 = 不動産業 + 観光サービス業」
ホテル業は、ホテルという有形資産(ハードウェア)に、熟練した人的サービス(ソフトウェア)が組み合わさった産業です。言い換えれば、不動産的側面と運営的側面の両方が重要な産業。まず有形資産(ハードウェア)、不動産的側面から見ていきましょう。
第一に、立地の重要性です。
ホテルは立地が固定された不動産商品。したがって、どこに位置するかがホテル運営の成否を左右します。もしソウルにホテルを建てるなら、観光客が多く集まる明洞に位置していれば当然運営はうまくいくでしょう。メインターゲット(主要利用者)のアクセス性が優れているということ。これはすべての不動産商品に共通する点です。しかし、すべてのホテルを明洞に建てることはできませんよね? したがって、逆に立地に合わせたコンセプトで開発することも重要な方法です。
用地がソウル中心街にあれば、都心型ビジネスホテル(ホテル業界では通常シティホテルと呼びます)が適しているでしょう。観光地域にあればリゾート型ホテルが良いですね。ソウル中心街でも公共交通アクセス性や周辺環境などを考慮し、施設水準(luxury、up-scale、mid-scale、budget等)を決めて開発する必要があります。

[写真1] 都心にはシティホテルを

[写真2] リゾート地にはリゾート型を
第二に、高い初期投資費用です。
ホテルはそれ自体が商品である装置産業で、建築・インテリア・FF&E(家具・備品・設備)・OS&E(運営用品・設備)など、ホテルオープン前に投資すべき費用が非常に高額。マンションや商業施設のように初期分譲で投資費用を早期回収する商品でもないため、資本力が裏付けられなければなりません。(分譲型ホテルもありますが、一般的なケースではありません。)
第三に、施設の老朽化が早いという点です。
ホテルは年中無休、1年365日24時間運営されます。実質使用時間で換算すると、ホテルの1年は一般的なオフィスビルや商業施設の2年以上に相当。したがって施設の老朽化が急速に進行します。
第四に、継続的な投資が必要です。
ホテルは施設状態が営業に直接影響します。したがって、徹底した施設管理が求められ、高い運営管理費用(会計用語で収益的支出)が伴います。それだけでなく、顧客の嗜好やトレンド変化に合わせて定期的にリモデリングする必要があるため、資本投資費用(会計用語で資本的支出)も高くなります。

[写真3] ドバイにあるアトランティスホテル。7つ星ホテルで、見るだけでお金の匂いがしますね。
では次に、サービス(ソフトウェア)、運営の観点から見ていきましょう。
第一に、人的資源への依存度が高いという点です。
ホテルでは人的サービスの水準が顧客満足を決定する重要な要因であり、サービスタイプ別に熟練した従業員を通じて良質のサービスを提供することが最初の成功要素です。そのため、ホテルでは人材管理(Human Resource Management)を非常に重視し、教育も定期的に実施します。
第二に、部門間の協業体制が重要です。
顧客が玄関に到着した瞬間からホテルのサービスは始まります。ドアマンがドアを開けるとポーターが荷物を運び、チェックインのためにロビーへ案内します。ロビーにあるフロントデスクでは、メイクアップ(客室整理)が完了した客室を割り当てます。
顧客は客室に滞在しながらレストラン、カフェ、スポーツセンター(ジム)、ラウンジなどを利用し、客室にいてもルームサービス、リネン(タオル、ベッドカバーなど)交換、アメニティ(使い捨てシャンプー、ローション、石鹸など)補充など各種サービスを要求します。つまり、ロビー、客室、廊下、レストラン、運動施設、宴会場など、ホテルのあらゆる空間でサービスが求められるため、スタッフは場所・状況に応じた適切なサービスを提供できなければなりません。したがって、客室部、フロント、飲食部、営業/マーケティング部、施設管理部など、ホテルの運営組織が相互に有機的に協力することで、円滑なサービス提供が可能になります。
そのため、ホテルサービスは単に親切に顧客を応対するだけでは済まない、高度なノウハウが必要です。マリオット、ヒルトン、インターコンチネンタルなど長い歴史を持つグローバルブランドの強みは、まさにこうした運営ノウハウを持ち、それをマニュアル化してホテルブランドごとに一定水準のサービスを提供できるという点です。
第三に、外部環境の変化に敏感だという点です。
ホテル業は基本的に観光産業の範疇に属します。したがって、ホテル需要は政治、社会、安全保障、疾病、経済、季節、文化など多様なイシューによって変動幅が大きくなります。過去のMERS事態や、セウォル号、北朝鮮の核実験時に観光客が大幅に減少した例を思い出せば、容易に理解できるでしょう。つまり、安定的な運営が難しい、やや不安定な事業群だということです。
第四に、繁閑の差が明確です。
夏の繁忙期に観光客が集中し、冬の閑散期には観光客が急減します。平日と週末の差も非常に大きい。観光業界では通常、シーズンをオンシーズン(繁忙期)、オフシーズン(閑散期)、ショルダーシーズン(繁忙期と閑散期の間)に区分します。そして、シーズン別の集客戦略を立てます。その中で価格政策(プライシング)が最も重要な戦略の一つ。人が集まる(稼働率が高い)オンシーズンには客室料金を最大限引き上げて売上を極大化します。逆にオフシーズンには客室料金を下げて稼働率を最大限高めます。

[写真4] ホテル運営組織(出典:中央日報2014.09.17記事より抜粋)
第五に、商品供給の限界性です。
ホテルは不動産という基本的な特性を持っているため、需要変動に応じて供給量を調整することができません。簡単に言えば、300室のホテルは宿泊客が多く来ても少なくても、1日に売れる客室の最大数は300室です。オンシーズンに客室数を400室に増やし、オフシーズンに200室に減らすことはできないということです。
第六に、商品価値の消滅性です。
ホテル商品には在庫の概念がありません。今日売れなかった客室を明日売ることはできないという意味です。分かりやすく言えば、2016年9月1日の106号室を販売できなかったら、その日の客室商品は消えてしまうのです。
第七に、高い固定費と低い変動費です。
ホテルビジネスは人的サービスが非常に重要だと申し上げました。したがって運営費用においても人件費が占める割合が高い。ところが人件費は、ホテル運営がうまくいってもいかなくても固定的に発生する費用です。(むやみにスタッフを解雇するわけにはいきませんから。) それに対し、ホテル売上と連動する変動費の割合は小さい。
客室を例に挙げましょうか? 客室を販売したときに発生する費用は、清掃費と洗濯費、アメニティ(シャンプー、石鹸、ローションなど)費用程度。清掃費は人件費なので固定費。残りの洗濯費とアメニティ費用が変動費ですが、金額的には微々たるものです。固定費性の費用が高い構造のため、とにかく売上を多く上げるのが有利。損益分岐点(BEP、Break Even Point)を超えれば収益が急激に増加するからです。
以上でホテル業の特性についての話を終わります。次回はホテル用語について語っていきます。
ご家族と過ごす幸せな5月をお過ごしください。
[連載目次]
2018.05 ホテル産業の特性
2018.06 ホテル用語簡単整理
2018.07 ホテルの主要機能と施設
2018.08 ホテルの運営方式
2018.09 ホテルブランドについて
2018.10 宿泊施設開発/運営成功事例(1)
2018.11 宿泊施設開発/運営成功事例(2)
2018.12 宿泊施設開発/運営成功事例(3)
2019.01 宿泊施設開発/運営成功事例(4)